
探しているデータが見つからない。 情報を持っている担当者が捕まらず仕事が進まない。 メールを延々と遡らなければ取引の経緯がわからない。
中小企業によくありがちなカオス状態ですが、実は半年前までの私たちもそうでした。 弊社ではこれらの課題を解決するため、Notionを使ったしくみづくりプロジェクトを発足し、業務改善に取り組みました。
本記事は「立ち上げ編」に続き、プロジェクトをご紹介するシリーズの第二回「実装編」です。
この記事でわかること
- Notionでプロジェクト進行管理をするコツは?
- どんな方針でページを設計すれば良い?
- 実装にはどのくらいの時間がかかる?
自己紹介
シリーズ第二弾・実装編を担当します、デザイナーのみきです。 2023年6月に中途入社し、現在2年目。 社内では、IR関連資料やスライドのデザインなど、エディトリアル領域を中心に担当しています。
もともと業務改善や情報整理に興味があり、今回のプロジェクトでも立ち上げメンバーとして初期段階から関わってきました。
個人としてのNotion利用歴
Notionは、2021年頃からプライベートで使っています。 日々の生活ログや読書・鑑賞記録、アナログゲームの情報管理まで、個人の情報整理ツールとして重宝しており、主要な機能には一通り触れてきました。
今回の社内プロジェクトでは、その経験をベースに、Notionを活用した業務管理の設計と実装を担当しています。
導入の経緯や課題については立ち上げ編で紹介していますが、実際にNotionを使って整理しようとした情報は、大きく分けて次の3つです。

- 社内に関する情報
- 案件に関する情報
- メンバーに関する情報
これらの情報を適切に社内で管理するために、まずは実装のための基本軸を練るところからスタートしました。
Notionページ設計の基本軸
設計でまず意識したのは、「管理が楽であること」と「使いやすいこと」の両立です。
弊社には当時専任のバックオフィス担当がおらず、普段の業務と並行して各メンバーが情報を扱う必要がありました。そのため、「誰が使っても迷わない」「必要な情報にすぐたどり着ける」仕組みにすることを重視しました。
Point 1. 管理が楽であること
- 階層構造を最小限にする
- 情報を深い階層にしまい込むと、整理や管理のハードルが上がってしまいます。できるだけフラットな構造を意識して、一覧性を重視した設計にしました。
- データベースの数を絞る
- タスク・案件・社内ナレッジなど、それぞれの役割ごとに必要な数だけデータベースを用意。それらをリンクドビューで使い回すことで、ひとつのデータベースが複数の目的に応える設計にしました。データベースの数を増やしすぎず、全体をシンプルに保つことを意識しています。

- リレーションで情報をつなぐ
- 案件とタスク、担当メンバーとマニュアルなど、関連する情報はリレーションで紐づけています。情報がバラバラに存在すると見落とされやすくなってしまうため、なるべく「浮いた状態」をつくらないように意識しました。

- タグライブラリを導入
- 各データベースで共通のタグを使えるよう、タグ専用のライブラリを設置しました。分類の軸を統一できるので、横断的に情報を探すときにも便利です。タグの数は絞り、できるだけ迷わないシンプルな設計にしました。

Point 2. 使いやすいこと
- 迷わせないページ構成
- 各ユーザーが必要な情報にすぐアクセスできるよう、メニューページの配置や見せ方を工夫しました。「どこから何をすればいいのか」が直感的にわかるような導線づくりを意識しています。
- テンプレートで入力の手間を削減
- 案件ページやナレッジページにはテンプレートを用意。使い慣れていないメンバーでも、積極的に情報を入力できるようにしています。
- 自動化の活用
- フィルターやプロパティによるソートを使って、「今見るべき情報」がすぐに表示される状態をキープしています。また、オートメーションも活用して、一部のプロパティは自動入力できるようにしています。
実装にかかった工数
全体の基本設計にはおよそ2日、そこから2〜3日ほどかけて機能面をブラッシュアップし、社内での試用をスタートしました。
とはいえ、ここまでスムーズに進められたのは、設計の方向性を事前にある程度固めていたからです。
実際には、導入前に他社の事例をリサーチしたり、必要な機能を洗い出したりといった準備に数週間をかけています。
Notionはテンプレートやノウハウが豊富で、ある程度イメージが固まっていればすぐに構築に移れるのが利点です。 ただし、実装スピードを重視しすぎると、現場の運用にフィットしない仕組みになってしまうリスクも。 「自社ではどのように使いたいのか?」をしっかり見極めることが、設計段階では特に重要です。
機能一覧
このあたりで、実際に導入した機能についても簡単に紹介しておきます。
- 案件管理
- これまでExcelで管理していた「数字まわりの項目」と、実務的な「案件の概要」を、ひとつのデータベースで一元管理するようにしました。 これにより、案件ごとの情報に誰でもアクセスしやすくなり、案件立ち上げ時の情報共有がスムーズになりました。
- タスク管理
- それまで各自に任せていたタスク管理を、チーム全体で把握・共有できる形に変更しました。 担当者・内容・締切を記入することで、タスクの切り分けがしやすくなり、進行の見通しが立てやすくなります。 さらに、タスクと案件を紐づけることで、案件ごとの進捗状況もひと目で確認できるようになりました。
- 個人ページ
- 社員ひとりひとりにページを用意し、紐づく案件やタスクを一覧で確認できる仕組みにしています。 これにより、業務の全体像を把握しやすくなり、セルフマネジメントに役立ててもらいやすくなりました。 また、他のメンバーページも閲覧できるため、「この人はこう使っているんだな」といった気づきが、利用の活性化やちょっとした交流のきっかけにもなっています。 あわせて、自己紹介なども記入してもらい、社員同士のコミュニケーションにも活用しています。
- 社内マニュアル
- これまで口頭や個別に伝えていた事務的なフローをマニュアルとして整理し、必要なタイミングで誰でも見られるようにしました。 既存の社員だけでなく、新入社員にもわかりやすく情報を届けられるように意識しています。
- ナレッジライブラリ
- これまではTeams内で断片的に共有されていたナレッジを、Notionのデータベースで管理するようにしました。 ヒヤリハットや制作ノウハウなど、これからの業務に活かせる知見が自然と蓄積されていくような仕組みを目指しています。
テスト運用で見えた課題と工夫
構築したページは、まず社内の少人数メンバーに試用してもらい、実際の使用感をもとに調整を重ねました。
個人でのNotion利用には慣れていたものの、チーム運用となると想定外の反応や課題も多く、学びの多いフェーズでした。
とくに印象的だったのは、「うっかりページを編集・削除してしまったらどうしよう」という不安の声。 Notionは権限設定が細かくできないため、“触っていい場所・触らないほうがいい場所”をあらかじめ設計で伝えておくことがとても大事だと気づかされました。
そこで、以下のような工夫を取り入れています:
- 重要なデータベース(マスターデータなど)は意図的にアクセスしにくい位置に配置
- ページごとに「このページで何をするか」のガイドを入れる
このように「ここまでは触って大丈夫」とわかるだけで、手を動かしやすくなります。 チームにとっても、導入初期の心理的ハードルを下げるポイントになりました。
全社運用のスタート
本格的な運用は、Notionに不慣れな20名以上のメンバーに対し、一斉に使用をスタートする形で始まりました。
もちろん、初期の段階では細かな修正やフィードバック対応が多く、テンプレートの修正やマニュアルの追加を急ピッチで進めることになりました。
それでも、「全体で一つの仕組みを共有する」ことの効果は大きく、案件の進捗やタスクの見える化が一気に進んだという実感があります。
Notionは「運用しながら育てる」ツール
Notion導入から数ヶ月が経った今も、ページの改善やマニュアルの調整は続いています。 特に以下のようなポイントについては、実際に使ってみてからの見直しが効果的でした。
- メニュー構成の見直し(ユーザーが迷いがちな部分の動線調整)
- マニュアルの記述方法(入力例の記載)
- 「誰が・いつ・どこで」見ればいいかがひと目でわかる設計の追求
個人で使っていた頃は「自由度の高いメモツール」という印象が強かったNotionですが、チーム運用に取り組んだことで、情報の整理・連携・共有を支える「基盤」としての力を改めて実感しました。
もちろん、すべてがスムーズにいったわけではありません。誰もが同じように使いこなせるわけでもないし、設計者の頭の中と、利用者の使い方にはギャップがあることも多いです。
それでも、「こうだったら使いやすいかも」という声をすぐに反映できる柔軟さは、Notionの大きな強みです。
導入を検討している方には、「まずはスモールスタートでもOK。使いながら育てていく姿勢が何より大事」ということを、実感を込めて伝えたいと思います。 だからこそ、「改善が続いていく前提で設計すること」、そして「そのスタンスを周囲にも共有しながら実装すること」が、より良いワークスペースづくりにつながると思います。
おまけ:Notionが社内ツールとして“始めやすい”理由
Notionは「何でもできるツール」というイメージを持たれがちですが、実際には「できること」と「できないこと」がはっきりしているツールです。
その分、「できること」の範囲内でしっかり設計すれば、非常に強力な味方になります。
- 豊富なテンプレートと事例
- Web上に参考情報が多く、他社事例や個人のノウハウも充実。困ったときに検索すれば、大抵のヒントはすぐに見つかります。
- トライ&エラーがしやすい設計
- UIがシンプルなので、導入ハードルが低く、「ちょっと試してみる」ことが気軽にできます。修正もしやすいため、完璧を求めすぎずに運用を始められます。
- 情報を「繋げる」機能が強い
- リレーションやリンクドビューをうまく使えば、「点」で存在していた情報を「線」にして、活用しやすい状態に整理できます。
一方で、ルールをかっちりと決めすぎたり、ページが複雑になりすぎると使われなくなってしまったり、管理が煩雑になってしまうこともあります。
運用していく中で気づいたのは、“関わる人の視点”が特に重要だということです。
Notionという柔軟なツールを通じて、これからもよりよい仕組みを模索していきたいと思います。